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2026.07.17
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「夏涼しく冬暖かい」は本当に両立できるか|注文住宅の設計で考えること

近年、住宅会社のチラシやウェブサイトで「夏涼しく冬暖かい家」というキャッチコピーを目にする機会は多いでしょう。

ただ、それが本当に実現できるのか、どうすれば実現できるのかが、具体的にイメージしにくいという方も多いのではないでしょうか。

実は「夏涼しく冬暖かい」を両立するには、断熱性能を高めるだけでは足りません。

夏の暑さと冬の寒さは、原因が異なるからです。

どちらか一方だけを考えた設計では、もう一方が犠牲になってしまうケースがあります。

今回は、「夏涼しく冬暖かい」が本当に両立できる条件を整理しながら、注文住宅の設計段階でどう考えればいいかを解説します。

「なんとなく高性能そうな家を選ぶ」ではなく、「なぜその設計が快適につながるのか」を理解することが、後悔しない家づくりの第一歩になるでしょう。

「夏の暑さ」と「冬の寒さ」は原因が違う

「夏も冬も快適にしたい」という望みはシンプルですが、夏の暑さと冬の寒さの原因は根本的に異なります。

まずここを整理しておきましょう。

冬の寒さは「熱が逃げる」ことが原因

冬に室内が寒くなるのは、主に暖めた熱が外に逃げるからです

壁・天井・床・窓などを通して、室内の暖かさがどんどん外に流れ出ていきます。

この「熱の流出」を防ぐのが断熱の役割です。

断熱材や高性能なサッシを使って壁・窓の熱の伝わりを抑えることで、暖めた室内の温度を保ちやすくなります。

断熱性能の高さはUA値(外皮平均熱貫流率)という数値で表され、数値が低いほど熱が逃げにくい家といえます。

断熱等級が高い家は、この数値が低く設計されています。

夏の暑さは「熱が入ってくる」ことが原因

一方、夏に室内が暑くなるのは、外からの熱が室内に入り込むからです。

夏の冷房時に外から室内に流れ込む熱エネルギーのうち、実に約70%が窓などの開口部を通して入ってくるとされます。

この「熱の侵入」を防ぐのが遮熱・日射遮蔽の役割です。

太陽の日差しが窓から直接入り込む「日射熱」を、窓の外側で遮ることが夏の涼しさを実現する最も効果的な手段になります。

断熱はあくまで「熱の移動を遅らせる」性質のものです。

夏に室内温度が上がってしまった後では、断熱性能が高いほど「こもった熱が逃げにくい」という逆効果になる面もあります。だからこそ、断熱と遮熱はセットで考える必要があるのです。

「高断熱なのに夏が暑い」が起きる理由

「高気密高断熱住宅にしたのに、夏がとても暑い」という声を耳にすることがあります。

断熱性能を上げたのになぜ?と感じるかもしれませんが、原因は明確です。

断熱性能を高めることと、日射熱を遮ることは別の話だからです。

どれだけ断熱等級を高めても、南や西の窓に遮熱の設計がなければ、強烈な日差しの熱が窓から室内にどんどん入り込みます。

断熱性能が高いほど、入ってきた熱が外に逃げにくくなるため、結果として室内温度がどんどん上がってしまうのです。

「夏涼しく冬暖かい」を実現するには、断熱と遮熱の2つを別々に、しかし連動して設計する必要があるでしょう。

両立の鍵は「断熱・遮熱・通風」の3つを整えること

夏の涼しさと冬の暖かさを両立する家づくりは、3つの要素を設計に組み込むことで実現できます。

①断熱性能|熱の流出入を「壁・床・屋根」で抑える

断熱は住宅の「外皮」と呼ばれる部分、つまり壁・床・天井・屋根に断熱材を施工することで、室内外の熱の移動を最小限に抑えます。

断熱材の種類と選び方

断熱材にはグラスウール・ロックウール・硬質ウレタンフォーム・セルロースファイバーなどさまざまな種類があります。

素材によって断熱性能・施工方法・コストが異なるため、どの素材を採用しているかは工務店に確認しておきたいポイントです。

充填断熱と外張り断熱

断熱の工法は大きく「充填断熱(壁の内側に断熱材を詰める方法)」と「外張り断熱(建物の外側を断熱材で包む方法)」に分かれます。

それぞれ一長一短があり、どちらが優れているとは一概には言えません。工務店の標準仕様と、その理由を聞いてみるとよいでしょう。

屋根・天井の断熱が夏に特に重要

夏の暑さという観点では、屋根・天井の断熱が特に重要になります。

夏場の屋根面は直射日光を受け続けるため非常に高温になりやすく、断熱が不十分だと屋根からの熱が室内に伝わりやすくなるからです。

屋根断熱・天井断熱をしっかり施工することが、夏の快適性に大きく影響するでしょう。

②日射遮蔽|「窓」から入る熱を設計で防ぐ

夏の涼しさを左右するのは、窓まわりの設計です。

いくら断熱性能を高めても、日射遮蔽の設計がなければ夏の快適性は実現しにくいでしょう。

軒・庇(ひさし)の活用

軒や庇を適切な長さで設けることは、日射遮蔽のなかでも最も基本的かつ効果的な方法です。

ほとんどの家で南側に90cmの軒を出すことで、窓から差し込む太陽光を夏は遮り、冬は取り入れることができます。

これは夏と冬で太陽の高度が大きく異なる特性を利用した設計です。

夏の太陽は高い角度で照りつけるため、軒があれば窓に日射が当たりにくくなります。

冬は太陽が低い角度から差し込むため、同じ軒の出でも光が室内に届きやすくなるのです。

東・西面の窓は特に注意が必要

東西面は夏場の朝夕に太陽高度が低くなりながらも強烈な日射が差し込むため、窓の配置を工夫したり、外付けブラインドや植栽などを活用して日射を遮蔽することが求められます。

東や西向きの窓は、朝夕の低い角度からの日差しが直接入り込みやすく、軒だけでは遮蔽しにくい方位です。

窓のサイズを小さめにするか、外付けの日射遮蔽アイテムをセットで設計しておくことが大切です。

Low-Eガラスの「遮熱型」と「断熱型」を使い分ける

現在の窓サッシで主流になっているLow-Eガラスには、「遮熱型(日射遮蔽型)」と「断熱型(日射取得型)」の2種類があります。

遮熱型は夏の日射熱を遮る効果が高く、断熱型は冬の日射を取り込みやすい特性があります。

方位や目的によって使い分けることが重要で、南面の窓には断熱タイプを選ぶのが基本ですが、地域や暮らし方によっては遮熱タイプを組み合わせる場合もあります。

「とにかく遮熱型にすれば安心」という考え方ではなく、方位ごとに最適なガラスを選ぶ設計が理想的でしょう。

外側で遮ることが最も効果的

窓の室内側に設置する障子やブラインド、レースカーテンより、窓の外側に設置する外付けブラインドやシェード、簾・よしずの方が高い効果が得られます。

これは熱を室内に入れる前に遮ることができるためです。

新築時に外付けブラインドやアウターシェードを後付けできるよう、設計段階で取り付け用のスペースや下地を確保しておくと安心です。

③通風計画|「風の流れ」を間取りに組み込む

断熱と遮熱が整った家でも、通風計画が不十分だと夏の快適性は下がります。

特に春・秋の気候のいい季節に自然の風を室内に取り込む設計は、エアコンへの依存を下げて光熱費の削減にもつながるでしょう。

南北を結ぶ「風の通り道」をつくる
一般的に夏は南東方向から風が吹き、冬は北西方向から風が吹きます。

南に大きな窓を配置して、北に風が抜けるよう窓を配置すれば、家の中を風が通り抜ける環境を整えられます。

南北に開口部を設ける設計は、通風の基本的な考え方として覚えておくとよいでしょう。

吹き抜け・高窓との組み合わせ
吹き抜けに高窓(ハイサイドライト)を設けると、暖かい空気が上に抜けていく「煙突効果(スタック効果)」が生まれ、自然換気の効率が高まります。

夏に涼しく感じる家は、こうした縦方向の空気の流れを意図的に設計に組み込んでいることが多いでしょう。

高気密住宅との兼ね合い

高気密住宅では計画換気が前提になるため、「窓を開けて自然換気する生活スタイル」との兼ね合いを設計段階で整理しておくことが大切です。

窓を開けやすい立地・方位かどうか、近隣の目線や防犯の問題がないかも含めて、通風計画を現実的に考えておきましょう。

「建売住宅に軒がない」ことのリスクを知っておく

注文住宅を検討するにあたって、建売住宅との違いを知っておくことは重要です。

軒をなくすことでコストを削減できる

建売住宅では、コストや外観デザインの理由から軒のない(または浅い)家が多く見られます。

軒を省くと建材費が下がり、外観がシンプルですっきりした印象になる一方で、夏の日射遮蔽が機能しにくくなるというデメリットがあります。

「新築したばかりだけど、G2基準にしたのに夏がとても暑い」という相談もあります。

ハウスメーカーや建売住宅では軒のない家が多数ありますが、軒がないと夏に暑くて大変な思いをします。

断熱等級を高く設定しても、日射遮蔽の設計が不十分であれば夏の快適性は確保しにくいのです。

注文住宅だからこそ「日射遮蔽の設計」を組み込める

注文住宅では、敷地の向き・周辺環境・家族の暮らし方に合わせて、軒の出の深さや庇の位置、窓のサイズと方位を一棟一棟最適に設計できます。

夏涼しさを確保しながら冬は暖かい光が差し込む快適なリビングを実現するためのこうした工夫は、後付けの製品に頼るのではなく、その土地の角度や地域の太陽や風の動きを読み解き、一棟一棟に最適な答えを導き出す「設計」の力にあります。

敷地が真南を向いていない場合でも、窓の配置や庇の角度を調整することで日射のコントロールが可能です。

「自分の土地に合った設計ができるか」を工務店に確認することが、夏涼しく冬暖かい家の実現につながるでしょう。

「夏涼しく冬暖かい」家の設計で確認したいこと

実際に工務店と打ち合わせをする際、何を確認すればよいかを整理しておきましょう。

工務店との打ち合わせで聞いておきたいポイント

・UA値(断熱性能)の実績値を教えてもらえるか
断熱性能は設計上の目標値だけでなく、実際に建てた住宅の実績値を確認することが大切です。「断熱等級〇」という表現だけでなく、UA値の具体的な数値を聞いてみましょう。

・日射遮蔽の設計を提案してくれるか
軒の出の長さ・庇の設計・窓の方位ごとのガラス選定など、夏の日射遮蔽を具体的に提案してくれる工務店かどうかを確認しましょう。
断熱の話しかしない場合、夏の暑さ対策が不十分になるリスクがあります。

・通風計画を間取りに組み込んでいるか
卓越風の方向(その地域でよく吹く風の向き)を踏まえた窓の配置・通風動線を設計に組み込んでくれるか確認しておきましょう。

・「夏の快適性」を体感できる機会があるか
モデルハウスや完成見学会を夏に訪問すると、断熱・遮熱・通風の設計が実際にどう効いているかを肌で感じることができます。
カタログや数値だけでなく、体感で確認することが最も確かな判断材料になるでしょう。

「夏涼しく冬暖かい」に潜む落とし穴

よかれと思った設計が、意図しない形で快適性を損ねることがあります。

代表的な例を押さえておきましょう。

南向き大窓を設けすぎると夏が暑くなる

「南向きに大きな窓を設けると明るくて暖かい」という考え方は冬には正解ですが、軒や庇の設計が不十分だと夏の日射熱が大量に入り込みます。

窓からの日射の影響として、庇のない窓が家に4つあると、900W×4か所=3600Wの熱量が入り、外壁や屋根からも熱は入ってきます。

南向きの大窓は、遮熱設計とセットで計画することが大前提です。

高断熱化により「冬のオーバーヒート」が起きることも

断熱等級が高い家では、日射の取り込みが過剰になると冬でも室温が上がりすぎる「オーバーヒート」が起きる場合があります。

特に南向きに大開口を設けた場合、晴天の冬日に暑くなりすぎることがあるため、可動式のブラインドやカーテンで調整できる設計にしておくことが重要です。

東・西面の窓を増やすと夏が暑くなりやすい

採光や眺望のために東・西面に大きな窓を設けると、朝夕の低い角度からの日射が室内に直接入り込みやすくなります。

東・西の窓はサイズと日射遮蔽対策を慎重に検討しましょう。

まとめ

今回は、「夏涼しく冬暖かい」が本当に両立できる条件と、注文住宅の設計で考えておきたいポイントを解説しました。

要点を整理します。

夏の暑さと冬の寒さは原因が異なり、冬は「熱が逃げること」夏は「熱が入ってくること」が問題であり、断熱だけでは夏の快適性は実現しません。

「夏涼しく冬暖かい」を両立するには、断熱(熱の流出を防ぐ)・遮熱(日射熱の侵入を防ぐ)・通風(自然の風を取り込む)の3つを設計段階でバランスよく組み込むことが大切です。

夏の涼しさを左右するのは窓の設計です。

南側への適切な軒・庇の設置、東西面の窓サイズと日射遮蔽対策、窓ガラスの遮熱型・断熱型の使い分けが重要なポイントになります。

建売住宅では軒がない設計も多く、断熱等級を高めても夏が暑くなるケースがあります。

注文住宅なら敷地・方位・暮らし方に合わせた日射遮蔽設計が可能です。

工務店を選ぶ際は、断熱性能だけでなく日射遮蔽の設計を具体的に提案してくれるかどうかが、夏涼しい家を実現できるかどうかの判断軸になるでしょう。

「夏涼しく冬暖かい家」は実現できます。

ただし、それには性能数値だけでなく、設計の考え方と工務店の提案力が大きく影響します。

私たちtattaでは夏の快適性と冬の暖かさを両立する家づくりについてのノウハウがあります。

この記事を読んで「夏涼しく冬暖かい家」を目指す方は、ぜひ一度ご相談ください。